事例1
今回の「相続相談」は、沼津市での事例です。お父様は既に他界していて、お母様の死去により兄弟間でのトラブルです。
家族構成:父はすでに死亡 母が今回の被相続人 兄弟2人 兄と弟 兄は疎遠で10年近く実家に来ていない 弟さんが母の介護を10年近く診ていた 母の相続財産は土地と家屋で3600万円、現金預金で1200万円、有価証券で2500万円です。 疎遠の兄には相続財産を渡したくないので相談に来ました。長年お一人でお母様の介護をされてきた弟さんの心中お察しいたします。お兄様との関係も気がかりですね。
今回のケースですと、お母様の相続財産は、土地と家屋が3600万円、現金預金が1200万円、株と債券が2500万円で、合計7300万円となりますね。
法律上の相続人は、お母様の配偶者であるお父様は既にお亡くなりになっているとのことですので、お子様であるお兄様と弟様の2人となります。原則として、このお二人がそれぞれ2分の1の割合で相続することになります。
「疎遠の兄には相続財産を渡したくない」というご希望ですが、残念ながら、法律上、お兄様は相続人としての権利をお持ちですので、完全に相続財産を渡さないということは難しいです。
しかし、全く方法がないわけではありません。いくつか考えられる方法について、会話形式でご説明させてください。
弟さん: あの…先生、実は兄とはもう10年近く連絡を取っていなくて、母の介護もずっと私一人でやってきたんです。正直、兄には一銭も相続させたくないのですが…。
私: 弟さんのお気持ち、痛いほどよく分かります。長年のご苦労、本当にお疲れ様でした。ただ、法律では、お兄様も相続人の一人となります。
弟さん: そうなんですね…。何か、兄に相続させない方法はないんでしょうか?
私: いくつか可能性はありますが、それぞれに条件や注意点があります。
弟さん: ぜひ教えてください!
私: まず考えられるのは、遺言書です。もしお母様が「弟に全ての財産を相続させる」という内容の遺言書を残されていた場合、原則としてその遺言書の内容が優先されます。
弟さん: 母は遺言書を書いていたかどうか…。ちょっと確認してみます。もし書いていなかったら、どうなりますか?
私: 遺言書がない場合は、原則通り、お兄様と弟様が法定相続分である2分の1ずつを相続することになります。
弟さん: それは困ります…。他に何か方法はないのでしょうか?
私: 次に考えられるのは、相続放棄です。お兄様ご自身が相続する権利を放棄するという方法です。
弟さん: 相続放棄ですか?お兄様がそんなことをしてくれるでしょうか…。
私: 確かに、お兄様のご協力が必要になります。もしお兄様が相続放棄をされれば、弟さんがお母様の全ての財産を相続することになります。
弟さん: なるほど…。もしお兄様が相続放棄をしてくれなかったら、他にできることはありますか?
私: もう一つの可能性としては、遺産分割協議を行うことです。これは、相続人全員で話し合い、誰がどの財産をどれくらい相続するのかを決めるものです。この話し合いの中で、「お兄様には〇〇円をお渡しする代わりに、残りの財産は弟さんが相続する」といった合意ができれば、その内容に従って遺産を分割することができます。
弟さん: 話し合いですか…。兄がまともに話し合いに応じてくれるかどうか…。
私: 難しい面もあるかもしれませんが、まずは話し合いの場を持つことが大切です。もし話し合いがうまくいかない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てるという方法もあります。調停では、裁判所の調停委員が間に入って、遺産分割について話し合いを進めてくれます。
弟さん: 家庭裁判所ですか…。なんだか大事になりそうですね。
私: そうですね。できれば、まずはご兄弟間でよく話し合ってみるのが良いかと思います。その際に、弟さんが長年お母様の介護をされてきたことなど、具体的な状況をお兄様にお伝えすることも重要かもしれません。
弟さん: そうですね…。一度、連絡を取ってみるしかないかもしれません。
私: はい。もし話し合いが難しいようでしたら、いつでもご相談ください。法的なアドバイスや手続きの方法をお伝えさせていただきます。また、今回のケースでは、弟さんのこれまでのご苦労を考慮して、寄与分というものが認められる可能性もございます。
弟さん: 寄与分ですか?
私: はい。被相続人の財産の維持や増加に特別の貢献をした相続人がいる場合に、その貢献度に応じて相続分を増やすことができる制度です。10年近くお母様の介護をされてきた弟様の貢献は、この寄与分に該当する可能性があります。
弟さん: それは初めて聞きました!もし寄与分が認められれば、兄よりも多く相続できる可能性があるということですか?
私: その可能性は十分にあります。寄与分が認められるかどうか、また、認められるとしてどの程度の割合になるかは、具体的な状況を詳しくお伺いした上で判断することになります。
弟さん: なるほど…。色々と教えていただきありがとうございます。まずは兄と連絡を取ってみて、話し合いを試みてみます。もしうまくいかなかったら、また改めてご相談させてください。
私: はい、もちろんです。いつでもご連絡ください。今回の件が、少しでも良い方向に向かうよう、私も精一杯サポートさせていただきます。
今回のブログでは、相続に関する基本的な知識と、疎遠な兄に相続させたくない場合のいくつかの選択肢についてご紹介しました。ご家族の状況によって、最適な解決策は異なります。もし同様のお悩みを抱えている方がいらっしゃいましたら、早めに専門家にご相談いただくことをお勧めいたします。