法人経営者の皆様、日々の経営活動お疲れ様です。売上向上や事業拡大と並んで、常に頭を悩ませるのが「コスト削減」と「人材の確保・定着」ではないでしょうか。これらは時に相反するように思える課題ですが、実は両立させる効果的な方法が存在します。
本記事では、確定拠出年金、法人保険、福利厚生制度を戦略的に活用し、法人経費の最適化や社会保険料の負担軽減を実現しながら、従業員の満足度を高め、ひいては企業成長を加速させるためのヒントを解説します。
1. 【節税効果も】確定拠出年金（企業型DC・iDeCo）で賢く資産形成と福利厚生を
「確定拠出年金」は、従業員の老後の資産形成を支援する制度であり、企業にとっても大きなメリットがあります。
- 企業型確定拠出年金（企業型DC）
- 掛金は全額損金算入: 企業が拠出する掛金は、全額法人経費として計上できるため、法人税の節税に繋がります。
- 社会保険料の対象外: 多くのプランで、企業の掛金は社会保険料の算定基礎に含まれません。これにより、企業負担分の社会保険料を軽減できる可能性があります。（役員・従業員も同様に負担軽減のメリットがあります）
- 福利厚生の充実: 従業員の退職金・年金制度として活用でき、魅力的な福利厚生制度として採用力強化や従業員の定着率向上に貢献します。
- iDeCo+（イデコプラス・中小事業主掛金納付制度）
- 従業員が個人で加入するiDeCoの掛金に、企業が上乗せして拠出できる制度です。
- 企業の追加掛金は全額損金算入可能で、社会保険料の算定基礎からも除外されます。
- 比較的少人数の企業でも導入しやすいのが特徴です。
これらの制度を導入することで、企業は税負担や社会保険料負担を軽減しつつ、従業員の資産形成をサポートするという形で福利厚生を充実させることができます。
2. 法人保険の戦略的活用で、万が一の備えと財務体質強化を
法人保険は、経営者や従業員の万が一に備えるだけでなく、企業の財務戦略にも大きく貢献します。
- 保障と節税の両立
- 役員や従業員を被保険者とする生命保険の中には、支払保険料の一部または全額を損金として計上できるものがあります。これにより、法人税の負担を軽減しながら、死亡保障や入院・手術保障などを準備できます。
- 解約返戻金のある保険を活用すれば、将来の事業資金や役員の退職慰労金の財源として計画的に準備することも可能です。
- 事業保障・事業承継対策
- 経営者に万が一のことがあった場合、借入金の返済や当面の運転資金確保など、事業継続に大きな影響が出ます。法人保険は、このような不測の事態に備えるための資金（死亡保険金）を確保する有効な手段となります。
- 事業承継においては、後継者への株式譲渡資金の準備や、相続税の納税資金対策としても活用できます。
- 福利厚生としての活用
- 従業員の弔慰金規程や見舞金規程と連動させ、保険金を原資とすることで、企業の負担を平準化しつつ、手厚い福利厚生を提供できます。
保険種類や加入目的によって、税務上の取り扱いや最適なプランが異なります。専門家と相談しながら、自社の状況に合った保険戦略を検討することが重要です.
3. 福利厚生制度の充実で、従業員満足度と企業競争力を向上
魅力的な福利厚生制度は、従業員のモチベーション向上、生産性向上、そして何よりも人材の確保・定着に不可欠です。
- 法定外福利厚生の重要性
- 健康診断のオプション充実、人間ドック補助、慶弔見舞金、育児・介護支援、自己啓発支援など、法定外福利厚生を充実させることで、「従業員を大切にする企業」というイメージが浸透し、エンゲージメント向上に繋がります。
- コストを抑えた福利厚生の導入
- 福利厚生のアウトソーシングサービスを利用すれば、多様なメニューを比較的低コストで導入できます。映画やレジャー施設の割引、宿泊施設の優待など、従業員のニーズに合わせたサービスを選べます。
- 前述の確定拠出年金制度や法人保険も、福利厚生の一環として従業員にアピールできます。
- 健康経営の推進
- 従業員の健康増進を支援する取り組みは、医療費の抑制（間接的な社会保険料負担の軽減にも繋がる可能性があります）や生産性の向上に繋がります。
従業員のニーズを把握し、自社の経営状況に合わせて無理なく継続できる福利厚生制度を構築していくことが大切です。
4. 社会保険料の適正化と負担軽減策
企業の固定費の中でも大きな割合を占める社会保険料。その負担を少しでも軽減するための方法を検討しましょう。
- 賞与の支払い方の工夫:
- 年間の賞与総額が同じでも、支払い回数を増やす（例えば年2回から年3回へ）など、支給方法を工夫することで、月々の標準報酬月額が下がり、結果として社会保険料が軽減される場合があります。ただし、制度変更や従業員の理解を得る必要があり、慎重な検討が必要です。
- 選択制確定拠出年金制度の活用:
- 従業員の給与の一部を掛金として確定拠出年金に拠出する制度です。この掛金は給与とは見なされないため、社会保険料の算定基礎から除外され、従業員・企業双方の社会保険料負担が軽減される可能性があります。ただし、従業員にとっては手取り給与が減るという側面もあるため、制度設計と丁寧な説明が不可欠です。
- その他:
- 適切な労働時間管理による残業代の削減は、結果として社会保険料の算定基礎となる賃金の抑制に繋がります。
- 健康経営の推進により、従業員の健康状態が改善し、長期的に医療費が抑制されれば、将来的な健康保険料率の上昇抑制に貢献する可能性も考えられます。
社会保険料の仕組みは複雑であり、安易な対策は問題を生じさせる可能性もあります。必ず社会保険労務士などの専門家に相談し、法的に問題のない範囲で適正化を図ることが重要です。
まとめ：攻めの福利厚生と守りのコスト削減で、持続的な企業成長を
本記事では、確定拠出年金、法人保険、福利厚生制度の活用を通じて、法人経費の最適化、社会保険料の負担軽減、そして従業員満足度の向上を実現するためのヒントをご紹介しました。
これらの施策は、単にコストを削減するだけでなく、従業員のモチベーションを高め、企業の生産性向上や競争力強化にも繋がる「攻めの戦略」と捉えることができます。
しかし、各制度の導入や運用には専門的な知識が必要です。税理士、社会保険労務士、ＩＦＡなど、それぞれの分野の専門家に相談しながら、自社に最適なプランを設計し、実行していくことをお勧めします。
未来への投資として、これらの施策を検討してみてはいかがでしょうか。
株式会社ＣＲＡＮＥでは、貴社の状況に合わせた具体的なご提案や、制度導入に関するご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
