相続問題、こうして解決しました!ある家族のケーススタディ
「相続」と聞くと、なんだか難しそう、揉めそう…そんなイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。しかし、適切な知識と準備、そして時には専門家の力を借りることで、円満な解決は十分に可能です。
今回は、相続問題に直面したあるご家族が、どのように問題を乗り越え、解決に至ったのか、具体的な事例を通してご紹介します。
【事例】遺言書がなかったAさん一家のケース

登場人物(仮名)
- 被相続人(亡くなった方): Aさん(70代男性)
- 相続人:
- 長男 Bさん(40代、会社員、Aさんと同居)
- 長女 Cさん(40代、主婦、遠方に嫁いでいる)
- 次男 Dさん(30代、自営業、近隣に在住)
相続財産
- 自宅の土地・建物(評価額 3,000万円)
- 預貯金(合計 1,500万円)
- 株式(評価額 500万円)
合計相続財産評価額:5,000万円

何が問題だったのか?
Aさんは数ヶ月の闘病の末、亡くなりました。生前、相続に関する話は特にされておらず、遺言書も見当たりませんでした。
四十九日を終え、相続について話し合いを始めたBさん、Cさん、Dさんでしたが、すぐに意見がぶつかってしまいます。
問題点1:自宅不動産の行方
- 長男Bさんは、Aさんと長年同居しており、今後も自宅に住み続けたいと考えていました。そのため、自宅不動産を自分が相続したいと主張しました。
- しかし、CさんとDさんは、「法定相続分通りに、不動産も売却して現金で分けたい」と主張。特にCさんは遠方に住んでいるため、不動産を共有名義にすることには消極的でした。
問題点2:感情的な対立
- もともと、CさんとDさんは、BさんがAさんと同居し、何かと面倒を見てもらっていたことに対して、少なからず不公平感を抱いていました。
- その感情が相続の話し合いで表面化し、「兄さんばかり有利なのはおかしい」「父の財産なのだから平等に分けるべきだ」といった意見が飛び交い、冷静な話し合いが難しい状況になってしまいました。
- 預貯金や株式の分け方についても、些細なことで意見が食い違い、話し合いは平行線をたどるばかりでした。
解決への道のり
話し合いが進まない状況に困り果てたBさんは、相続問題に詳しい弁護士に相談することにしました。
ステップ1:専門家への相談と現状整理
- 弁護士はまず、Bさんからこれまでの経緯や他の相続人の意向を丁寧にヒアリングしました。
- その上で、遺言書がない場合の法定相続分(このケースでは兄弟3人がそれぞれ3分の1ずつ)や、遺産分割の方法(現物分割、代償分割、換価分割など)について、Bさんに分かりやすく説明しました。
ステップ2:弁護士による交渉と提案
- 弁護士はBさんの代理人として、Cさん、Dさんと連絡を取り、交渉を開始しました。
- 第三者である弁護士が間に入ることで、感情的になっていたCさん、Dさんも少しずつ冷静さを取り戻し、話し合いのテーブルに着くことができました。
- 弁護士は、Bさんが自宅を取得したいという希望を尊重しつつ、Cさん、Dさんにも不公平感がないよう、「代償分割」という方法を提案しました。これは、Bさんが自宅不動産を相続する代わりに、CさんとDさんに対して、それぞれの法定相続分に見合う現金を支払う(代償金を支払う)というものです。
ステップ3:不動産の適正な評価
- 代償金の額を算出するためには、自宅不動産の適正な評価額を出す必要がありました。そこで、弁護士の助言のもと、不動産鑑定士に評価を依頼しました。
- 客観的な評価額が出たことで、Cさん、Dさんも不動産の価値について納得することができました。
ステップ4:遺産分割協議書の作成と合意
- 不動産の評価額と、その他の預貯金、株式の評価額を元に、弁護士が具体的な代償金の額を算出し、Cさん、Dさんに提示しました。
- 何度か調整はありましたが、最終的に全員が納得できる金額で合意に至りました。
- 合意内容に基づき、弁護士が「遺産分割協議書」を作成し、相続人全員が署名・捺印。無事に遺産分割協議が成立しました。

解決!そして見えてきたこと
- 結果: Bさんは、長年住み慣れた自宅を手放すことなく相続することができました。Cさん、Dさんも、それぞれ納得のいく代償金を受け取ることができ、円満な解決に至りました。
- かかった期間: 弁護士に相談してから約半年で解決しました。
- 教訓:
- 早めの専門家への相談: 当事者だけでは感情的になりがちな相続問題も、法律の専門家が間に入ることで、冷静かつ公平な話し合いを進めることができます。
- 遺言書の重要性: もしAさんが生前に遺言書を作成していれば、相続人の負担は大きく軽減されたかもしれません。遺言書は、残された家族への最後の思いやりとも言えます。
- コミュニケーションの大切さ: 相続は家族の問題です。普段から家族間でコミュニケーションを取り、お互いの気持ちや考えを理解しておくことが、いざという時の助けになります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回は、遺言書がなかったために一度は話し合いが難航したものの、弁護士という専門家のサポートを得て、無事に解決できた事例をご紹介しました。
相続問題は、どの家庭にも起こりうることです。そして、一つとして同じケースはありません。
もし、あなたが相続問題で悩んでいる、あるいは将来の相続に不安を感じているのであれば、まずは相続に詳しい専門家(弁護士、司法書士、税理士、FPなど)に相談してみることをお勧めします。きっと、あなたに合った解決の糸口が見つかるはずです。
一人で抱え込まず、勇気を出して専門家の扉を叩いてみてください。
【免責事項】 このブログ記事は、相続問題解決の一例を分かりやすく紹介することを目的としており、具体的な法律相談やアドバイスを提供するものではありません。個別の事案については、必ず相談ください。