夫死亡時の遺族年金について:現行制度と見直し後の比較(例:妻30歳、子5歳)

配偶者が亡くなられた場合、残されたご家族の生活を支える公的制度として遺族年金があります。現行制度と、将来的に検討されている見直し案を比較して、どのような変化があるのか見ていきましょう。
今回の2028年度の制度変更案は、20代~50代で子供のいない配偶者が亡くなった場合の遺族厚生年金の制度変更案です。 子供がいる配偶者への変更は基本ありません。
子どもの居る前提となるモデルケース
- 夫: 会社員、平均月収35万円(額面)、厚生年金加入8年
- 妻: 30歳
- 子ども: 5歳
現行制度で受け取れる遺族年金
現行制度では、夫が会社員(厚生年金加入者)だった場合、妻と子どもは遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方を受け取ることができます。
遺族基礎年金
お子さんがいる場合に支給され、子どもの人数によって金額が変わります。
- 基本額:831,700円(令和7年4月分から)
- 子どもの加算: 第1子・第2子: 各239,300円(3人目以降の子の加算:各79,800円)
このケースでは、妻と子ども1人の場合、年間で1,071,000円(831,700円 + 239,300円)となります。
遺族厚生年金(小数点以下切り捨て)
亡くなった方の厚生年金加入期間や報酬に応じて計算されます。夫の平均月収35万円、厚生年金加入8年の場合、簡略化した計算では年間431,628円となります(※)。
(※)遺族厚生年金の正確な計算は複雑であり、最低保障額や中高齢寡婦加算など、様々な要素が絡むため、この金額はあくまで目安としてご認識ください。実際の受給額は個別の状況により異なります。 今回のケースでは、加入期間が8年(96ヶ月)と短いですが、「300月みなし」が適用されるため、計算上は300ヶ月として扱われます。 したがって、350,000円×1,000/5.481×300ヶ月×4/3=431,628円
現行制度での合計受給額(年間)と支給期間
お子さんが18歳になる年度末までは、遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方を受け取れます。
年間合計:431,628円(遺族厚生年金)1,071,000円(遺族基礎年金)=1,502,628円
お子さんが18歳になった年度末以降は遺族基礎年金の支給は終了し、妻は遺族厚生年金のみを受け取ることができます。現行制度では、原則として妻が死亡するまで(または再婚するまで)支給されます。
- お子さんが18歳になるまで(13年間):1,502,628円 × 13年 =19,534,164円
- お子さんが18歳になった後(30歳から90歳までの残り47年間):431,628円 × 47年 =20,286,516円
妻が30歳から90歳まで受け取れる合計額(概算):19,534,164円 +20,286,516円 =39,820,680円
こどもがいない配偶者に支給される「遺族厚生年金」を原則5年間の有期支給へ変更
現在、遺族厚生年金の制度見直しとして、支給期間が原則5年間に限定されるといった報道が一部でされています。もし、この見直しが適用された場合、上記の現行制度と比較して受給額が大幅に変わります。
- 受給期間:
- 60歳未満で死別:原則5年間の有期給付
- 60歳以上で死別:無期給付(現行どおり)
- 年間受給額: 431,628円(現行制度と同額と仮定)
合計受給額(概算): 431,628円 × 5年間 = 2,158,140円
この見直し案が実現した場合、現行制度と比較して受給総額が大きく減少することになります。
まとめと注意点
項目 | 現行制度 | こどもがいない配偶者見直し後の制度(原則5年給付の場合) |
---|---|---|
年間受給額 | 1,071,000円(子が18歳まで) 431,628円(子が18歳以降) | 431,628円(報道されている原則5年間に限定される場合) |
支給期間 | 妻が死亡するまで(子が18歳になるまでは遺族基礎年金も) | 原則5年間(報道されている見直し案の場合) |
合計受給額 | 39,820,680円 (30歳から90歳まで) | 2,158,140円 |
【重要な注意点】
- 上記の見直し後の制度は、あくまで現時点での報道に基づいた情報であり、**正式に決定されたものではありません。**今後の議論や社会情勢の変化により、内容が変更される可能性もあります。
- 遺族年金の計算は、個々の状況(亡くなった方の実際の厚生年金加入期間、報酬額、子の有無、妻の年齢など)によって大きく異なります。上記の金額はあくまでモデルケースに基づいた概算であり、実際の受給額を保証するものではありません。
なぜ生命保険で「不足分」を補う必要があるのか?
2028年度の遺族厚生年金改正により、これまで想定していたよりも公的保障が手薄になる可能性があることをご理解いただけたでしょうか。しかし、遺されたご家族の生活は待ったなしです。そこで重要になるのが、生命保険です。
生命保険が遺族厚生年金の不足分を補う上で必要な理由は以下の通りです。
- 遺族厚生年金の不足分を補填: 2028年改正後の遺族厚生年金の支給額と、ご家庭に必要な生活費との差額を生命保険でカバーすることで、これまで通りの生活レベルを維持することができます。
- 特定の支出への備え: 住宅ローンや教育費(学資保険だけでは不足する場合)、葬儀費用など、まとまった資金が必要となる特定の支出に対して、生命保険の死亡保険金で備えることができます。
- 遺族厚生年金の受給期間外の保障: 遺族厚生年金は、受給期間や条件が定められています。例えば、子供が独立したり、再婚したりすると受給資格がなくなる場合があります。生命保険であれば、設定した保険期間中は安定した保障を確保できます。
- 支給までのタイムラグへの対応: 遺族厚生年金の申請から支給開始までには、ある程度の期間を要する場合があります。その間の生活費を、生命保険の死亡保険金で賄うことができます。
- 個別のニーズに合わせた設計: 遺族厚生年金は画一的な制度ですが、生命保険はご自身の家族構成、ライフスタイル、収入、負債状況など、個別のニーズに合わせて保障額や保障期間を自由に設計することができます。
4. 今すぐ見直すべきこと!
2028年の改正は、決して遠い未来の話ではありません。ご自身の家庭がもしもの時に安心して暮らせるよう、今すぐ以下のことを見直しましょう。
- 現在の遺族厚生年金の受給見込み額を確認する: 日本年金機構の「ねんきんネット」などを活用し、ご自身の現在の状況で受け取れる遺族年金の目安を確認しましょう。
- 家庭の月々の支出と将来の必要資金を把握する: 毎月の生活費、住宅ローン、教育費など、具体的な金額を洗い出しましょう。
- 現在の生命保険の保障内容を確認する: 加入している生命保険が、現在の家族構成やライフプランに合っているか、保障額は十分かを確認しましょう。
これらの情報をもとに、不足する部分を補うための生命保険の検討を始めることが重要です。
まとめ:安心できる未来のために、今できること
2028年の遺族厚生年金改正は、私たち一人ひとりのライフプランに影響を及ぼす可能性があります。公的な保障だけでは十分でない可能性がある今だからこそ、生命保険による「自助努力」の重要性が増しています。
大切なご家族が、もしもの時に経済的な不安なく生活できるよう、この機会に一度、ご自身の保障について真剣に考えてみませんか?不安な点やご不明な点があれば、お気軽にご相談ください。専門家がご相談者様に最適なプランをご提案させていただきます。

遺族年金は、もしもの時に残されたご家族の生活を支える大切な制度です。ご自身の状況に合わせたより正確な情報や、将来の見直しに関する最新の情報については、日本年金機構のウェブサイトや年金事務所にご相談いただくことをお勧めします。
見直しの影響を受けない方
① 改正前から遺族厚生年金を受給している方 ② 60歳以降の妻・夫 ③ 18歳年度末までの子供を養育する間にある方の給付内容 ④ 2028年度に40歳以上になる妻
この情報が、今後の生活設計を考える上で少しでもお役に立てれば幸いです。