出産・子育てを支える日本の社会保障制度:安心して産み、育てるために
日本で子どもを産み育てる家庭を支援するため、国や自治体は様々な社会保障制度を設けています。妊娠・出産から育児期間中までの経済的負担を軽減し、安心して子育てができる環境を整えることが目的です。
主な制度には、出産費用の補助、休業中の所得保障、子どもの医療費助成などがあり、それぞれに対象者や保障内容が定められています。

出産時に受けられる主な保障
1. 出産育児一時金:出産費用の実質的な負担を軽減
健康保険や国民健康保険の加入者が出産した際に、子ども一人につき原則50万円が支給されます。これにより、正常分娩で平均50万円前後かかる出産費用の大半を賄うことができます。
産科医療補償制度に加入の医療機関等で妊娠週数22週以降に出産した場合 | 1児につき50万円 |
産科医療補償制度に未加入の医療機関等で出産した場合 | 1児につき48.8万円 |
産科医療補償制度に加入の医療機関等で妊娠週数22週未満で出産した場合 |
- 仕組み:多くの場合、「直接支払制度」が利用されます。これは、健康保険組合などから医療機関へ直接費用が支払われるため、退院時に窓口で高額な出産費用を支払う必要がなくなります。出産費用が50万円を超えた場合は差額を支払い、下回った場合は差額を受け取ることができます。
- 対象:妊娠4ヶ月(85日)以上で出産した方(早産、死産、流産、人工妊娠中絶も含む)。
2. 出産手当金:産休中の生活を支える所得保障
会社員や公務員など、勤務先の健康保険に加入している方が、出産のために会社を休み、給与が支払われない場合に支給されます。
- 支給期間:出産日以前42日(多胎妊娠の場合は98日)から、出産の翌日以後56日目までの範囲内で、会社を休んだ期間。
- 支給額の目安:1日あたりのおおよその額は以下の計算式で算出されます。
支給開始日以前の継続した12ヶ月間の各月の標準報酬月額を平均した額 ÷ 30日 × 2/3
3. 妊婦健診費の助成:母子の健康を守るための健診費用をサポート
妊娠中は、母体と胎児の健康状態を確認するために定期的な妊婦健診が不可欠です。この健診費用は自己負担ですが、各自治体が費用の一部を助成しています。
- 利用方法:市区町村の窓口に妊娠届を提出すると、母子健康手帳とともに「妊婦健康診査受診票(補助券)」が交付されます。この補助券を健診先の医療機関に提出することで、検査費用の一部が助成されます。
- 助成額:助成される回数や金額は自治体によって異なります。
育児期間中に受けられる主な保障

1. 育児休業給付金:育休中の所得を保障
雇用保険に加入している方が、原則として1歳未満の子どもを養育するために育児休業を取得した場合に支給されます。
- 支給額の目安:
- 育児休業開始から180日目まで:休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 67%
- 181日目以降:休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 50%
- 手続き:原則として、勤務先を通じてハローワークに申請します。
※労働者から育児休業取得の申し出があった場合、事業主は育児休業給付金受給資格確認手続きをとる必要があります。 手続きは事業所を管轄するハローワークで行いますが、電子申請も可能です。
2. 産前産後・育児休業中の社会保険料免除
産前産後休業および育児休業の期間中は、健康保険と厚生年金保険の保険料が、被保険者本人・事業主ともに免除されます。
- メリット:保険料の負担がなくなりますが、免除期間中も保険料を納付したものとみなされるため、将来受け取る年金額が減ることはありません。

3. 児童手当:子育て世帯の生活を安定
児童(0歳から18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある子をいいます。以下同じ。)を養育している方
児童の年齢 | 児童手当の額(一人あたり月額) |
---|---|
3歳未満 | 15,000円(第3子以降は30,000円) |
3歳以上 高校生年代まで | 10,000円(第3子以降は30,000円) |
※「第3子以降」とは、児童及び児童の兄姉等のうち、年齢が上の子から数えて3人目以降の子のことをいいます。
支給時期
児童手当は、毎年2月、4月、6月、8月、10月、12月(偶数月)に、それぞれの前月分まで(2か月分)を支給します。
例)6月の支給日には、4月・5月分の児童手当を支給します。
4. 乳幼児(子ども)医療費助成:子どもの医療費負担を軽減
子どもが病気やけがで医療機関を受診した際の医療費(保険診療の自己負担分)を、自治体が助成する制度です。
- 対象年齢・助成内容:助成を受けられる年齢の上限(未就学児まで、中学生まで、高校生までなど)や、自己負担の有無、所得制限などは、お住まいの自治体によって大きく異なります。
これらの制度は、申請が必要なものがほとんどです。妊娠がわかったら、お住まいの市区町村役場や、勤務先の担当部署、加入している健康保険組合などに詳細を確認し、忘れずに手続きを行いましょう。